2007年10月28日深夜、ツインリンクもてぎへ向けて東北自動車道を南下する。この日は2日間にわたる室屋のホームベース、ふくしまスカイパークでのイベントの撮影を終え、睡魔に襲われながらの移動だ。単調な高速道路では気を許すと一気に眠くなってしまう。それを振り払う為に、室屋のことを考えることにした。すると気持ちが高揚して眠気もどこかへ行ってしまう。team deepbluesを立ち上げ、苦労をしながら地道に努力してきたのを見続けてきた自分にとっては、弟が晴れの舞台に上がるかのような気がして、誇らしく思うと同時に、老婆心ながらうまく飛べるのか?と、いらぬ心配をしてしまう。「9月に入った頃からHaute Voltigeで使える新しい技にチャレンジし始め、音楽に合わせてのトレーニングは概ね完成はしているように見て取れるが…」などと考えている内にツインリンクもてぎへ到着した。翌29日午前中、室屋がフライ・インしてきた。1度ローパスをしてランウェイを確認しランディングする。もてぎの短い滑走の約半分でランディングロールを完了し、ハンガー前で駐機した。選手権とランディングは別ものだが、着陸の選手権があれば室屋が優勝だと、どうでも良いことを考えながら室屋を出迎えた。これでロシア勢4名、ドイツのフィリップ・スタインバッハの役者が揃い2007年のオートボルテージュは開幕した。
11月2日から4日に掛けての結果は皆さんご存じだと思うが、ミハイル・マミストフ、スベトラナ・キャパニナ、スベトラナ・フェデレンコのロシア勢が上位を独占した。これはある程度予想された事だが、新たな発見は、フィリップの操縦するエクストリームSbach300(旧名称 エクストリーム3000)が思った以上にハイパフォーマンスな機体だと知らされたこと。通常のプログラムでは、機体をボックスの最上部に導いて、高度エネルギーを利用するのがセオリーなのに、フィリップはボックスと呼ばれる1km立方の競技空域の最深部からの垂直上昇で演技をスタートさせたのだ。これを見て凄いと思ったあなたは「通」ですねと言いたい。
そして、最も感動したフライトはと言うと、当然最終日の室屋のフライトだ。1人で撮影していたファイナル1日目は最後でミスが出てしまい、消化不良なプログラムとなったが、グランドスタンドで観た最終日は、もの凄く気合いが入っていた事はもとより、応援している観客の手拍子にあわせて飛ぶ情景を目の当たりにしたら、物言えぬ感情が沸き上がってきてしまった。最後はボックス端をオーバーしてしまったが、室屋自身もそれまでの演技には満足していたようで、「最後にはみ出しちゃいましたー」と笑顔で話してくれた。そして、観客の選ぶパブリックアワードで1位になった際の「皆さん贔屓にしてくれてありがとうございます。」と照れながらのコメントは力をくれた観客への室屋の心からの感謝の言葉であった。
2007年のHaute Voltigeは大きな転機を迎えた大会だったと思う。確かに大御所と呼ばれるパイロット達が抜けたのは残念だったが、将来彼等を越えていくであろう、若いパイロット達がしっかり力をつけており、2008年に初参戦する、カストール・ファントーバやカテール・ブーロンシェが台風の目として活躍するはずだ。彼等を迎え撃つのは日本代表のレッドブル・アスリート室屋義秀、ニューヒーローとして世界の強豪と渡り合いオートボルテージュを盛り上げてくれる事を期待する。
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| 2007年の表彰台はロシア勢の独占となった。 左からスベトラナ・キャパニナ、ミハイル・マミストフ、スベトラナ・フェデレンコ。 | 初の試みとなった観客が選ぶパブリックアワードで1位になった室屋義秀。観客にもっとも愛された嬉しさや、最後のミステイクが悔やまれた複雑な気分の室屋。2008年こそは選手権での表彰台を獲得したいところだ。 | |
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| オープニングフライトで、サイドスリップしながら観客の眼下をパスするスベトラナ・キャパニナ。2008年の優勝候補だ。 | 演技終了後のローパスはツインリンクもてぎならではの光景だ。しかも飛行はスタンドの中段付近の高度で行われる。 | 複雑な操作を必要とするタンブルの複合技を決めた室屋。室屋を世界標準のパイロットに押し上げた技だ。 |
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| 手を振りながらローパスでスタンド前を通過する室屋。ローパスの時は、室屋に限らず全てのパイロットがスタンドの様子が良くわかるという。 | 初参戦となった室屋とフィリップ・スタインバッハ。このオープニングフライトもオートボルテージュの魅力の一つ。他の選手権では全てのパイロットが一同に開始フライとすることは稀である。 | 隣県の茨城県の航空自衛隊百里基地から飛来しU-125と共にサーチアンドレスキューのデモを行った百里救難隊のUH-60J救難ヘリコプター。 |
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| フライトガーデンに並べられた競技機たち。機体の前ではパイロットのサインを貰ったり、短い時間だが会話もできるので人気のあるプログラムだ。毎日フライト終了後に南滑走路が開放される。 | 日本初登場となったフィリップ・スタインバッハとエクストリームSbach300(旧名称 エクストリーム3000)。予想以上のパフォーマンスを見せてくれたコンビだ。 | コチラレーシングのステッカーでデコレートされたビクトル・チュマルのSu-31M。力強いフライトが信条だ。 |
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